第四章の登場人物


フレデリカ・バウマン

ロズワール邸のメイド。
推定で二十三、四歳。透明質な金色の髪を長く伸ばし、ピッシリと背筋を正した女性。微笑みをたたえる口元が、外からはっきりと見てとれるほどに鋭い牙の群れに台無しにされている。細めた瞳の鋭さも尋常ではなく、緑色の瞳の瞳孔は獲物を狙い定めるネコ科の肉食獣のような輝きを宿している。身長はややスバルより高い上に筋肉質な体格のそれとほとんど変わらない。
ガーフィールの父親違いの姉で、父親の家名を名乗っている。ハーフの父と人族の母を持つ、亜人の血を四分の一だけ受け継いだクォーター。母子三人で路頭に迷っているところを、ロズワールに拾われて聖域で育った。母はフレデリカとガーフィールをロズワールに預けると、その足で屋敷を出て消息不明。ロズワール邸に十二歳の頃から十年以上仕えていた。数ヶ月前に一身上の都合で辞職していたが、レム不在で屋敷が維持できなくなったラムに呼び戻された。

ガーフィール・ティンゼル

聖域の住人。
反抗期真っ盛りの14歳。ラムとそれほど身長差はないが、それでもわずかにガーフィールの方が上背がある。逆立った短い金髪に、額の白い傷跡が目立つ。鋭い目つきは獰猛で、ネコ科の猛獣のような犬歯がやけに白い。猫背に丸めた背丈は男性にしては低く、だが小柄であることを他者に侮らせないぐらいには猛々しい鬼気が全身から漏れ出している。
フレデリカの父親違いの弟で、母親の家名を名乗っている。ハーフの父と人族の母を持つ、亜人の血を四分の一だけ受け継いだクォーター。先祖返りすると金色の大虎に変化する。なお彼が作中で使用する諺はすべて彼がラムにかっこつけるために適当に言ってるだけである。

「やられてもやられても立ち上がる……だッからどうした。どんだけ打たれても心だけは屈しない……そォれがなんだ。勝ち目のない戦いだろうと、絶対に逃げない……なァにが偉い!」

リューズ・メイエル

聖域のまとめ役。
外見年齢は推定十一、二歳、実年齢は百十数歳。目鼻立ちの整った、愛らしい顔立ちの小さな少女。薄赤の長い髪はウェーブがかっており、細い毛質と相まって見るからにふわふわな様子である。服装は裾を引きずるほどぶかぶかの白いローブを羽織るというもので、袖から手が全部出ていないところが実にあざとい。
エキドナが己の記憶と知識を焼き付け繰り返す器として作ったクローン。エキドナが嫉妬の魔女に滅ぼされたことで実験は中断され、器を生みだす仕組みだけが残った。増え続ける器の管理と『聖域』でのリューズ・メイエルの役割を引き継ぐために、あらかじめそれなりの人格を植え付けられて生まれた四人以外は、言語や最低限の常識感といった知識を除けば赤子同然の状態で生れ落ちる。複製体とは言え、人の体の構造の全てをマナで再現し続けるのには莫大な負荷がかかるために、一人が動ける時間はそう長くない。一日交代で、四日ごとにリューズ・メイエルとしての役割が回っている。同じ複製体同士は、思考の伝達が可能。他のリューズは侵入者に対する目の働きや、伝達の役割を持たせて『聖域』の各所に散らばせている。エキドナに『強欲』の使徒として認められた者がリューズ・メイエルの水晶に触れると、複製体の指揮権が与えられる。
  • リューズ・メイエル(オリジナル):クリスタルに封じられて永久の時を過ごす少女。『聖域』の存続を願い、その条件を魔女が呑んだのを理由に実験にその身を捧げた。
  • α(あるふぁ):リューズ代表人格のひとり。聖域解放賛成派。
  • β(べーた):リューズ代表人格のひとり。聖域解放賛成派。
  • Σ(しぐま):リューズ代表人格のひとり。聖域解放中立派。θから引き継ぎ、ガーフィールを墓所から連れ出した。
  • θ(しーた):リューズ代表人格のひとり。聖域解放反対派。ガーフィールを連れ戻しに墓所に入って試練を受けた。
  • ピコ:スバルが名付けた、まだ生まれて間もない、役割を与えられたばかりの複製体のひとり。簡単な指示をこなすぐらいの知識はあるが、それ以外は赤子と変わらない。
  • その他
水晶に触れた『強欲』の使徒の命令に従う複製体。知識や経験がなく、大雑把な指示しかやり遂げることはできない。定期的に食事をとるという習慣すら指示が必要で、森の中で活動限界を迎えると小さく丸まって生きるのを投げ出そうとする。

エキドナ / 『強欲』の魔女

享年十九歳。真っ白な、処女雪の降り積もる雪原のように白い印象の少女。背中にかかるほどの長さの髪は雪を映したような儚げな純白で、露出の少ない肌もまた透き通るほどに美しい。理知的な輝きを灯す双眸と、身にまとう簡素な衣装のみが漆黒で、二色で表現できる彼女を端的なまでの美しさで飾りつけている。目にすれば、誰もが見惚れてしまうほどの美貌。黒い瞳を持つ。
ありとあらゆる叡智を求めて、死後の世界にすら未練を残した知識欲の権化。『嫉妬の魔女』への抑止力として神龍ボルカニカの力で墓所へ封じられている。

「君が持つ特性、『死に戻り』はすさまじい権能だ。その有用さが、君は本当の意味で理解できていない。自分の望まない終わりを許容しない、何度でもやり直す、未来へ何度でも手を伸ばせる――それは、探究者にとって究極に近い理想だ。だって、そうだろう? 本来、ある物事への結果というものは、一つの結果が出てしまったらそこから動かせないんだ。結果が出るまでの過程でならば、その結果がどうなるかについての仮説は様々なものが立てられる。こういったアプローチをすれば、あるいはこういう条件にしてみれば、様々な仮説や検証は可能だ。けれど、実際にその結果を出そうと実験に臨むとなれば、結果も試せる仮説も検証も、一つに集約されざるを得ない。まったく、本当の意味でまったく同じ条件を作り出すことは不可能なんだ。どんなに条件を整えたとしても、その時点とまったく同じ条件は絶対に作り出せない。あのとき、別のやり方をしていたらどんな結果が出ていたのか――それは、ボクたち探究者にとっては決して手を届かせることのできない、理想のその先にある夢想でしかない。『世界の記憶』を持つボクには、その答えを『知る』手段は確かにあるさ、あるとも。あるけれど、それを使うことを、用いることをボクはよしとしない。ボクは『知りたい』んであって、『知っていたい』わけじゃない。ひどく矛盾を生む、ボクにとっては忌むべき物体であるといえるね。話がそれそうだから本題に戻すけれど……そう、そんなボクたち、あるべき結果を一つのものとしか受け入れられない、観測手段を一つしか持たないボクたちからすれば、君という存在は、その権能は喉から手が出るほど欲しいものなんだ。『同じ条件』で、『違う検証』ができ、『本来の結果』とは『別の結果』を見ることができる、究極的な権能――これを、欲さずにいられるだろうか。これを目の前にして、あらゆることを試さずにいられるだろうか。もちろん、ボクとしても決して君にそれを強要するつもりなんてない。あくまで、君は君の目的のために、その『死に戻り』を大いに利用するべきだ。ボクもまた、君が求める未来へ辿り着くために最善を尽くそう。そして、その過程でできるならボク自身の好奇心を満たすことにも大いに貢献してもらいたい。これぐらいは望んでも罰は当たらないはずだ。君は答えを見られる。ボクは好奇心を満たせる。互いの利害は一致している。ボクだって答えを知っているわけではないから、わざと間違った選択肢に君を誘導して、その上で惨たらしい結末を迎えるような真似はできるはずもない。直面する問題に対して、最初から正しい答えを持たないという意味ではボクと君はあくまで対等だ。共に同じ問題に悩み、足掻き、答えを出そうともがくという意味では正しく同志であるというべきだろう。そのことについてはボクは恥じることなくはっきりと断言できる。検証する手段が増える、という意味でボクは君をとても好意的に思っているから、君を無碍にするような真似は絶対にしないと誓おう。もちろん、答えが出ない問題に直面して、ボクの協力があったとしても簡単には乗り越えられない事態も当然あり得るだろう。知識の面で力を貸すことができても、ボクは決して現実に干渉できるわけではない。立ちはだかる障害が肉体的な、物理的な力を必要とする問題だった場合、ボクは君の助けになることはできない。幾度も幾度も、あるいは数百、数千と君は心と体を砕かれるかもしれない。もしもそうなったとしても、ボクは君の心のケアを行っていきたいと本心から思っている。そこには君という有用な存在を失いたくないという探究心からなる感情が一片も混じらないとは断言できない。けれど、君という存在を好ましく思って、君の力になりたいとそう思う気持ちがあるのも本当なんだ。だから悪いようには思ってもらいたくない。繰り返しになってしまうが、ボクは君の目的に対して有用な存在だと胸を張れる。そう、ボクがボクの好奇心といった強欲を満たすために、君の存在をある意味では利用しようと考えるのと同じように、君もまたボクという存在を君の『最善の未来へ至る』という目的のために利用したらいい。そうやって都合のいい女として、君に扱われるのもボクとしては本望だ。それで君がやる気になってくれるというのなら、ボクは喜んでボクという存在を捧げよう。貧相な体ですでに死者であるこの身を、君が望んでくれるかは別としてだけどね。おっと、こんなことを言っては君の思い人に悪いかな。君の思い人――銀色のハーフエルフ、そして青い髪の鬼の少女。そう君が必ず助け出すと、守ってみせると、心で誓い行動で示している少女たちだ。二人に対して、そんな強い感情を抱く君の心のありように対するボクの考えはこの場では述べないこととして、しかし純粋に君の前に立ちはだかる壁の高さは想像を絶するものであると断言しよう。現状、すでにわかっている障害だけでどれだけ君の手に負えないものが乱立していることか。それらを一人で乗り越えようとする君の覚悟は貴く、そしてあまりにも悲愴なものだ。ボクがそんな君の道筋の力になりたい、なれればと思う気持ちにも決して偽りはない。そして、君はボクのそんな気持ちを利用するべきなんだ。君は、君が持ちえる全てを、君が利用できる全てを利用して、それだけのことをして絆を結んだ人々を助けなくてはならない。それが君が君自身に誓った誓いで、必要なことであると苦痛の道のりの上で割り切った信念じゃないか。だからボクは君に問う、君に重ねる、君を想おう。君が自分の命を使い捨てて、それで歩いてきた道のりのことは皮肉にもつい今、第二の『試練』という形で証明された。あるいはあの『試練』は、君にこれまで歩いてきた道のりを理解させるためにあったんじゃないかとすら錯覚させるほど、必要なものにすら思える。確かに必要のない、自覚することで心がすり減る類の光景であったことは事実だ。でも、知らなかった状態と知っている状態ならば、ボクはどんな悲劇的な事実であったとしても後者の方を尊く思いたい。君はこれまで、そしてこれからも、自分の命を『死に戻り』の対価として差し出し、そして未来を引き寄せる必要があるんだ。そのために犠牲になるものが、世界が、こういった形で『あるのかもしれない』と心に留め置くことは必要なことだったんだ。いずれ、自分の命を支払うことに何ら感傷を抱かなくなり、人間的な感情が希薄になって、大切な人たちの『死』にすら心を動かさなくなり、無感動で無感情で無気力な日々に沈み、最善の未来へ辿り着いたとしても、そこに君という存在が欠けた状態で辿り着く――そんな、徒労感だけが残る未来へ辿り着かないためにも、必要なことだったんだ。そう、世界の全てに無駄なことなんてものはなく、全ては必要な道行、必要なパズルのピースなんだ。それを理解するために『試練』はあった。君が今、こうして足を止めてしまっている理由に、原因にもっともらしい意味をつけて割り切ることが必要なら、こう考えるといい。そして、ボクは君のその考えを肯定する。君が前へ進むために必要な力を、ボクが言葉で与えられるのならどんな言葉でもかけよう。それが慰めでも、発破をかけるのでも、愛を囁くのでも、憎悪を掻き立てるものであっても、それが君の力になるのであればボクは躊躇うことなくそれを行使できる。君はそれを厭うかもしれないが、君のこれからの歩みには必ずボクのような存在の力が必要なんだ。君がこれから、傷付くことを避けられない孤独の道を歩んでゆくというのなら、その道のりを目を背けることなく一緒に歩ける存在が必ず必要なんだ。そしてその役割をボクならば、他の誰でもなく、このボクならば何の問題もなく一緒に歩いていくことができる。繰り返そう、重ねよう、何度だって君に届くように伝えよう。――君には、ボクが必要なはずだ。そして、ボクには君が必要なんだ。君の存在が、必要なんだ。ボクの好奇心はもはや、君という存在をなくしては決して満たされない。君という存在だけが、ボクを満たしてくれる。ボクに、ボクの決して満たされることのない『強欲』に、きっと満足を与えてくれる。君の存在はもはやボクの、この閉ざされた世界に住まうボクにとっては欠かせない。君が誰かの希望でありたいと、世界を切り開くために力を行使するのであれば、ボクという哀れな存在にそのおこぼれをいただくことはできないだろうか。ボクは君がその温情をボクに傾けてくれるというのなら、この身を、知識を、魂を、捧げることを何ら躊躇いはしない。だからお願いだ。ボクを信じてほしい。こうしてこれまで本心を伝えようとしなかったのは、決して君を騙そうとしたりだとか、隠し立てをしようとしていたわけじゃない。時期を見計らっていただけだ。今、この瞬間に本心の欠片を訴えかけていたとしたら、きっと君はボクから離れてしまったことだろう。ボクにとってそれは耐え難い損失なんだ。もちろん、それは君にとっても、求める未来を遠ざけるという意味で正しく損失というべきだろう。いずれ、君は『死に戻り』という特性上、きっと求める未来へ辿り着くことだろう。けれど、その辿り着ける未来に対し、君が支払う代償は少ない方がいいに決まっている。ボクは、ボクならばそれを軽減することが可能だ。最終的に求める結果に辿り着ければいい、などと大目的を理由に小目的を蔑ろにするような、人でなしな考えをするとは誤解しないでほしいんだ。確かに誘惑に駆られて、こうした場合の結果を見たいがために、最善の道行きに必要な要素に気付いていながら言葉にしない――というような行いを絶対にしないと断言できるほど、ボクはボクの欲望を抑制できていない。そのことは認めよう。けれど、誤魔化しはしない。もし仮にそんな信頼に背くような行いに手を染めるようなことがあれば、それを隠すようなことだけは絶対にしない。必ず打ち明ける。そして、失った信頼に応えられるよう、何度でも君のために力を尽くそう。どんなことがあっても、必ずボクは君を君が望む最善の未来へ送り出す。絶対に、絶対にだ。だからそのために必要な手段であると割り切って、ボクを選んではくれないだろうか。ボクが君に望み、君に求める要求は契約の際に述べたこと通りだ。あとは君が、君自身が、欲しいと欲する願いに対してどこまで身を切れるか、という話になってくる。ボクの覚悟は今述べた通りだ。あとは、君の覚悟を聞きたい。君の方こそ、ボクとの契約を交わし、ボクの協力を得て、その上で必ず未来へ辿り着くのだと、その気概があるのだとボクに証明してみせてほしい。それができてこそ初めて、君は第二の『試練』に打ち勝ったと胸を張って言えるんだ。第三の『試練』に進み、そしてそれを乗り越えて『聖域』の解放を果たす。今後、『聖域』と君の思い人、そして大切な人々に降りかかる災厄を思えば、これは越えなくてはならない正しく『試練』なんだ。それを乗り越える力が、覚悟が君にあるのだと、ボクに教えてほしい。そしてその上で、ボクを奪って、ボクの知識を利用して、その先にあるものを得ていこう。ボクが君に望み、君に求め、そして代わりに君に差し出せるものは以上だ。ボクは真摯に、正直に、全てを打ち明けたつもりだ。その上で、君がどういった判断をするのか――それを、ボクに教えてほしい。ボクという存在の、好奇心の一端を満たすためにも、ね」

ミネルヴァ / 『憤怒』の魔女

ウェーブがかった金色の髪を揺らす碧眼の美少女。短いスカートを始めとして動きやすそうな格好で全身を固めている。身長はかなり低いのに、胸が大きいのと全体的に女性らしい肉感が溢れていて、なんとも扇情的な雰囲気を醸し出している。しかし、当人の態度がさばさばしているので、なんとも健康的な色気。
争いに満ちた世界を嘆きながら、あらゆる人々を殴り癒した。

単純な話、目の前の重傷者を癒すために世界の反対側で地割れが発生しても知らんぷいってのがミネルヴァの考え方だからね。
最終的な差引はとんとんだったかもしれないけど、一人助けるのに百人死んでたってこともたぶん何度もあったはずだしね。

まあ、天変地異でケガ人が出たら、そのケガ人を助けるために癒しパンチしに行って、その癒しパンチでまた別のところで天変地異が起きるからそこにも走っていって癒しパンチして以下エンドレス。
なので、ミネルヴァは常に立ち止まらずに世界中を走り回っていて、それが理由でどこで天変地異が起きるかわかったもんじゃないので、世界中のあらゆる国々が手を焼いていた天災という扱い。

知ったことじゃないわ、とは言うけど助けようとは走り回るよ。
ただ、その結果、また別のところで被害が生まれても「あたしが走っていって助けるし!」というその場しのぎを命のある限り続けた、超迷惑な魔女。それがミネルヴァたん。
 (鼠色猫/長月達平 [2014年 01月 13日 12時 19分] より)

「疲労感とか、目に見えないものってどうでもいいと思うのよね。あたしは傷を癒す。世界の寿命が縮もうがなんだろうが、知ったこっちゃないわ」

セクメト / 『怠惰』の魔女

赤紫の髪を尋常でなく伸ばした、気だるげな印象の美女。病的に青白い肌と唇。伏せた目は眠たげというより生きる気力に欠けているかのように細められていて、呼吸ひとつすら億劫そうな仕草が周囲に鬱々とした雰囲気を振りまく。ゆったりとした黒の法衣を着用しているが、あちこちに汚れやほつれなどが見つかるそれは着たきり雀を地でいっている感がすごい。
安らぎをもたらすそのためだけに、大瀑布の彼方へ龍を追いやった。

「ふぅ、それはあたしにはなんとも……ああ、ちょうどいいさね、はぁ。あたしも面倒だったところだし、ふぅ、あとのことはあの子に任せて眠るとするさ。はぁ、呼吸するのも面倒臭い。一生分の空気をいっぺんに肺に送り込んだら、それでもう一生呼吸しなくて済むとかそんな風に思わないかい、はぁ」

ダフネ / 『暴食』の魔女

年齢没年十三、四歳ぐらい。身長はおおよそ百五十センチ前後。灰色がかった肩ぐらいまでの髪を、二つくくりにしている。色白で華奢、胸は小さい。斜めに立った棺の中に入れられて、拘束具に全身をがんじがらめにされた上に、その両目を固く固く黒の目隠しで封じられている完全拘束状態の少女。
飢餓から世界を救うために、神と異なる獣を生み出した。白鯨、大兎、黒蛇の創造主。

「そうそう、それぐらい警戒しなきゃダメですよぅ。だぁって、この世は食べるか食べられるかの関係でしかないんですからぁ」

テュフォン / 『傲慢』の魔女

濃い緑髪を肩口で揃えて、リンゴのように赤い頬をした少女。褐色の肌に白のワンピースのような服装が可憐に似合っていて、童女らしい愛らしさを周囲に惜しげもなく振りまいている。髪に留めた青い花を模した髪留めが特徴的な、どこをどう見ても、無害で無邪気な少女。
幼さ故の無邪気と無慈悲で咎人を裁き続けた。

「アクニンなのか、そうじゃないのかーって聞いてるんだよー。どーなのー?」

カーミラ / 『色欲』の魔女

年齢没年17歳。身長160センチ。薄紅の髪を腰ほどまで伸ばした、化粧に印象を左右される平凡な顔立ちの少女。手足は細く、胸も小さめで、おおよそ『色欲』の名にふさわしいとは思えない見た目。しかもなんの因果か常に発光しており、どこにいても目立つことこの上ない。
自信がなく、伏し目がちで常におどおどとしており、にも関わらず発光する体質のせいでどこにいても目立ってしまう発光系薄幸少女。だが、その怯えた小動物のような態度はあらゆる男女の保護欲を、あるいは加虐心をくすぐり、色気を感じるはずもない貧相な肉体は容易く折れそうなか弱さを感じさせて喉を鳴らせる。――物語は、誰もがお姫様と結ばれるわけではない。主人公とヒロインが結ばれる物語の背景には、そんな華やかな舞台と無縁の人物たちによる恋物語がある。彼らは誰もが振り向くような美女でも、国を傾けるほどの美少女でもなく、どこにでもいる、自分にとって特別な相手を見つけて結ばれる。カーミラのその凡庸すぎる容姿は、どこにでもいて万人が愛する女性たちの姿の集合体。言ってみれば、漫画読んでるときに感じるモブキャラが一番可愛いの法則である。
能力は『色欲』の権能。凡庸な見た目でありながら、あらゆる男女を虜にしたカーミラの権能は純粋に『愛されること』に特化。その権能の前に、人は彼女を目にすれば彼女以外の存在を意識することなどできない。彼女しか見えない。たとえ横から剣に串刺しにされようと。彼女しか存在しない。たとえ業火に焼かれる最中でも。もう彼女しか感じられない。本当の意味で呼吸すら、鼓動すら忘れてしまうほど。――彼女の前には、愛に溺れた幸せな死に顔ばかりが並ぶ。
世界を愛で満たそうと、人あらざるものたちに感情を与えた。

「わ、たしはこの子……す、好きじゃない、けど、私を騙し、た……え、エキドナちゃんの、味方も、しな、しないよ?
 私を、だ、騙したり、嫌った、り……い、嫌なことをする人、を……『絶対に許さない』」

サテラ / 『嫉妬』の魔女

人格はサテラ≠嫉妬の魔女。
六人の魔女を滅ぼし、自らの糧として世界を敵に回した。
嫉妬の魔女は、大瀑布の近くにある封魔石の祠に、四百年間封じられたままでいる。賢者と龍、そして剣聖の力があってなお、彼の存在を滅し切ることはできなかった。大瀑布の傍ではマナの働きが著しく低下する上、祠にいる魔女の瘴気に耐えることのできる存在はまずいない。また、物理的に賢者の監視網を抜けることもできないために、祠に近づくのはほとんど不可能である。

「あなたをずっと。あなただけをずっと、愛しています」

菜月賢一

昴の父親。マヨラー。
四十過ぎ。甘いマスクに社交的で、道を歩けばよく知り合いから声をかけられたり、女子高生のメアドをゲットしたりする。平時からテンションが高く、気分屋なところがある。あの手この手の趣向を凝らして、スバルの目覚めに嫌がらせするのはいつものこと。完食したマヨネーズのふたを押入れに集めている。

「――いつまでたっても、お前は手のかかる息子だよ。まったく」

菜月菜穂子

昴の母親。マヨラー。
ぼんやりとした雰囲気を漂わせる、目つきの悪い女性。パッと見、かなり不機嫌さをうかがわせる視線の鋭さだが、その実、内心では別になにも考えていない人柄。的外れで見当違いな思いやりは全然役に立たないことの方が圧倒的に多いが、それでもいつもスバルのことを優先している。父子ともに認める世界一察しの悪い女。

「――いってらっしゃい」

池田

賢一の友人。
万馬券当ててタイに移住して、現地の幼な妻に騙されて身ぐるみ剥がされて、真っ黒に焼けながら肉体労働に打ち込んでいる。年賀状と暑中見舞い、寒中見舞いとお盆にクリスマス、父の日と母の日には手紙がくる。

フォルトナ

紫紺の瞳に、銀色の長い髪の毛は煩わしいと短く切り揃え、鋭い目つきをしている。エミリアの父方の叔母で、エルフの集落でエミリアの世話をしていた母代りの人物。パンドラの権能に惑わされたジュースの『見えざる手』に胸を貫かれて、エミリアの腕の中で息を引き取った。

初代ロズワール

メイザース家初代当主。推定16歳前後。藍色の長髪に黄色の瞳、細面で柔らかい物腰の好青年。生前のエキドナを「先生」と呼び慕い、魔法の教えを受けたり、『聖域』の結界の構築に協力していた。

『憂鬱』のヘクトール

年の頃は16歳くらい。黒に近い茶褐色の髪は前髪が眉にかかる程度の長さで、顔立ちは女性と見紛うほどに整っている。とろ んと眠そうに細められた瞳の色は黒で、白いシャツに黒のズボンを穿いた、ひどく簡素な格好をした人物。生物・魔法問わず対象物を押し潰す、不可視の加重のような能力を持っている。その力は大罪の魔女エキドナと互角以上でありながら、なぜか後世に存在が知られていない。

「もう、本当に嫌だ。すごい下がる。己がこんなに下がるとか、すごい久しぶりすぎて本当に最悪だ。最悪、最悪、最悪の最悪の最悪の最悪だ。――本当に、憂鬱だ」

パンドラ /『虚飾』の魔女

見るもの全てが震えるほどに美しい少女。長く透き通る白金の髪に、長い睫に縁取られる双眸は深い青で、整いすぎた顔立ちは神すら指を触れることを躊躇うほどに精緻な造形美。小柄な体を包むのは一枚の白い布だけで、少女の素肌にそれ以外のものを触れさせることを世界が拒んでいるのだと納得させる雰囲気があった。只者ではない存在感と、只者であるはずがない風格。紡がれた声は聴いたものの体と心を縛りつける魔法めいた魅力がある。視線を向けられ、声をかけられる。少女のその行動一つを自分に向けられるだけで、死んでもいいほどの多幸感が全身を支配することが避けられない。
薄っぺらで利己的な論理を振りかざして、事象を好き放題に自分好みに『書き変える』ことが出来る。生き残ることに突出した魔女。権能によって黒蛇を制御まではいかずとも、目的地へ誘導することは可能。秘密裏にされており、魔女教においても、司教様の穏健派とも他の過激派とも、どちらも共通して口にしてはならない禁忌。


「さあ、おいでなさい。――その覚悟の果てまで、抱いて味わわせてください」

アーチ

大森林の集落で暮らす年若いエルフの男性。フォルトナから託されたエミリアと逃走中、黒蛇に襲われて命を落とした。

「フォルトナ様……きっと、あの子は、大丈夫ですよ」

  • 最終更新:2014-07-19 23:45:07

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