第三章の登場人物


クルシュ・カルステン

カルステン公爵家当主、王選候補者正当派。
年齢20歳。身長168センチ。深緑の髪を背中の真ん中ほどまで伸ばし、ひとつに束ねた凛々しい女性。鼻筋の通った美形であり、琥珀色の双眸の持ち主。柔らかな面差しの持ち主なのだが、本人の気質故に唇と表情を厳しくしていることが多く、それ故に精悍な印象を他者に与える。女性らしい起伏に富んだ体つきをしているが、普段から好んで男装めいた格好をすることが多い。ドレスを着て優しく微笑めば、印象ががらりと変わるタイプ。
誠実、実直、正道――およそ、それらの言葉を体現したような性格の持ち主。人の上に立つ、というある種の使命を帯びて生まれてきたような人物であり、それに見合った才覚と努力を継続してきた傑物。すでに父親から家督を譲り受けており、王国の重鎮である公爵としての役割を父親以上に取り回している。立場上、政治的なやり取りであったり、一種の腹芸であったりを使うこともできるが、当人の気質としては自身で動く実践主義であり、武人としての誇りも持ち合わせている。また、役職や性質を度外視すれば非常に素直な性格の持ち主で、よく主従の関係を無視した発言をするフェリスに、誤った知識を植えつけられたりしては方々で天然の部分をさらしたりもしている。追及しても、すぐ言い包められてる。
能力は『風見の加護』。風を読む性質と、風のように目に見えないものを見る性質を併せ持つ加護。彼女はその加護を通して他者の感情の風向きを読むことが可能で、詳細を読み解くことはできずとも『嘘』を言った、という事実を隠すことはできない。また、風系統の魔法を得意とし、自身の剣技と魔法を組み合わせた『百人一太刀』と呼ばれる剣撃は、目に見えない刃で視認範囲をぶった切る超級の剣技である。

記憶を奪われ男勝りな面はひそめるが、物語後半には記憶喪失verの一面も残ったハイブリッドな性格になるという。

「魂の在り方が、その存在の価値を決める。己にとっても、他者にとっても、もっとも輝かしい生き方こそを、魂に恥じない生き方こそを人はするべきなのだ」

フェリックス・アーガイル / フェリス

クルシュの一の騎士にして、ルグニカ王国の『青』。
年齢19歳。身長172センチ。亜麻色の髪を肩口で揃えたセミロングにし、同色のネコミミを頭部に生やした亜人種。猫のような大きな瞳は黄色に輝き、髪には大きめの白いリボンをしている。これは幼い頃にクルシュにもらったもので、片時も離さず身につけている。男性であるが、長い手足は白く細く、スバルとほぼ同身長ながら線の華奢さは比べるべくもない。整った面貌の持ち主で、真剣な表情で髪型と服装を見なければ精悍な顔立ちでもある。普段はその顔を愛嬌たっぷりにしているため、可愛らしさしか表出していない。異世界でスバルを驚愕させたまさかの男の娘。
ネコミミを生やした格好と、愛嬌たっぷりの仕草、そして男性ながら大多数の女性を圧倒する女性らしさを併せ持つ異世界の設定詐欺師。猫撫で声とスキンシップ過剰な態度で、騎士という立場にありながらまったくそれらしくない人物。ルグニカ王国の中でも傑出した水魔法の使い手で、治癒・治療の分野で彼の右に出るものは国どころか世界を見渡してもそうはいない。その治癒術師としての腕を活かし、王国中の難病・重傷者を治療して回る多忙な身の上でもある。本人はクルシュの役にも立つからと、それを苦に思っていない。アーガイル家は普通の人間の家だが、フェリスは母親の不貞の結果、ネコミミが付属で生まれてえらいお家騒動が起きた。幼少の頃、実家で悲惨な扱いを受けていたところを、行き掛かり上関わりを持ったクルシュによって救われる。以来、彼女に心酔しており、彼の全てはクルシュに捧げられている。アーガイル家は色々な経緯を経て取り潰しになった。とぼけた態度や口調で誤魔化しているが、生き死にに多く触れてきたことから非常にシビアな死生観と価値観の持ち主でもあり、特に生きる気力に欠ける弱者を心底軽蔑している部分がある。また、コンプレックスから純粋に弱者のことも嫌い。三章のスバルは数え役満です。
能力は『水の加護』。水系統の魔法を、およそ到達点まで極められる才能を有している。他の系統がからっきしの代わりに、フェリスの水系統の魔法は治癒方面に特化し、死者蘇生の手前までならどんな難病・重傷でも癒すことができる。また攻撃手段として、治療行為などで自身の手からオドに干渉した相手の肉体にマナを流し込み、暴走させることが可能。操り人形にしたり、体内の循環器系を狂わせて死に至らしめることも。クルシュには秘密にしている能力。

「心棒し、これ以上ない存在だとそう思うからこそ、同じようで違う存在が許せないんでしょう。似ているのに違う、紛い物。――その存在が」

ヴィルヘルム・ヴァン・アストレア

剣鬼。
年齢61歳。身長178センチ。体重60キロ台後半。色の抜け落ちた白い髪を、年齢に見合わず豊かに残した老紳士。深い皺の奥、青く澄み切った瞳の輝きは鋭く、精悍な面持ちの理想的な歳の取り方をした老人。体つきは鍛えられており、背筋もピンと伸びている。
穏やかで懐の大きく、でも厳しくするところは厳しくする理想のお爺ちゃん。普段は物腰柔らかな紳士であるが、有事の際には剣鬼としての苛烈な部分が顔を出し、誰よりも早く窮地に駆け込んでいく剣士馬鹿一代。
かつては剣鬼の名で国中に知られた人物であり、衆目の前で表彰される当時の剣聖を真っ向から斬り合いでねじ伏せ、無理やりに自分の嫁にした【亜人戦争終結セレモニー事変】は当時を知る人々の話のタネとして長く伝わった。妻とした元剣聖の女性との夫婦仲は非常に良好で、当人は隠しているつもりが奥さんにべた惚れしているのは周知の事実であった。その最愛の妻を『白鯨』によって奪われ、それを打倒する手段を求めて彼の老人はアストレア家から出奔。紆余曲折を経てクルシュの臣下に加わり、白鯨討伐の機会を虎視眈々と狙っていた。スバルとの協力で見事にそれを成し遂げ、奥さんの敵討ちと自分自身への誓いを果たす。協力者となったスバルを非常に好意的に思っている。プロット上にいなかった人物とは思えないほど超大活躍を見せ、出番回と主役回が用意されている、ある種の成り上がりをやってのけた人物である。なお、妻以外の家族関係は微妙な状況にあり、特に息子と孫であるラインハルトとの折り合いは非常に悪い。
生まれは、北国グステコとの国境に近い辺境を預かる地方貴族トリアス男爵家の三男坊。トリアス家は過去には武名を誇っていたが、ヴィルヘルムが生まれた頃には没落した弱小貴族となっていた。
加護なし。ただひたすらに剣に身を投じ、剣技の冴えに魂を捧げた結果、剣聖に匹敵し得る実力にまで己を高めた努力の人物。戦闘力は作中、当然ながら最上位クラス。ただし魔法系統の才能は欠片もないため、接近戦以外での戦力はあまり当てにならない。現役時代は『近づいて斬ればいい』の精神で幾多の戦乱を突破。鍛錬は続けているものの、さすがに現役時代に比べれば二周りほど実力は低迷している模様。

「テレシア・ヴァン・アストレア。我が妻の剣傷が開いた。――私はそれを確かめるために、魔女教に関わり続けなければならないのです」

ラッセル・フェロー

王都商人組合代表者、貧民街・裏路地の顔役。
年齢29歳。身長180センチ。体重60キロ台。くすんだ金髪をロン毛にした成金風の人物。服装や装飾品に金を使い、見た目から他者に自分の価値を知らしめることを好んで行う商売人。背は高いが、鍛練と無縁の肉体は細く弱く、直接戦闘力に欠けそうな見た目。
利に敏く、抜け目のない思考の現実主義者。いわゆる商人らしい商人であり、物事を基本的に損得勘定で判断し、いかに自分が多く利を得るかといった点にしか興味がない。妻帯者であるが、それも立場として必要であるからの結婚でそこに愛はない。柔和な人当たりとアルカイックスマイルで武装し、相手をギリギリまで絞り尽くそうとする蚊みたいな人物。王都の商人組合のまとめ役であり、王都の商業全体の算盤を弾いている中心人物。また、貧民街などの裏の界隈にも顔が知れており、貧民街で暴れ回っている荒くれ者にもある程度の融通を利かせられる関係でもある。白鯨討伐を持ちかけ、さらにケータイ電話を取り引き材料にスバルに協力。スバルが利用できるうちは協力関係を継続できる、損得で繋がっているある意味で安心できる協力者である。この人の活躍は、トンチンカン同様かなり先。
能力は『目利きの加護』。ものの良し悪しが見抜ける加護。現物が目の前にあれば、その状態や品質に関して見間違うことはない。ただし、知識が身につくタイプの加護ではないので、彼の知っているものでないものが対象物である場合、良し悪しがわかるだけで使い方や価値がわかるわけではない。

アナスタシア・ホーシン

カララギの若き商会主、王選候補者。
年齢22歳。身長155センチ。ウェーブがかった腰まで届く薄紫の髪をした、小柄な体つきの人物。愛らしい顔立ちと小動物めいた雰囲気があるが、王選候補者の中では例外を除き最年長。浅葱色の瞳の持ち主。スタイルは見た目相応の残念状態だが、当人はそれはそれで使い道もあると気にしていない。
打算深く、自分の利益に執着する守銭奴体質。自分第一優先で、自分の利益からこぼれ落ちた分で自分の周りが幸せになるのは好き。自分でも認める欲深い性格で、孤児として育った経験もそれに影響している。幼少の頃に下働きとして務めていた商会で、小さな取引きに口出ししたことが切っ掛けでトントン拍子に仕事を任される。結果、私財を増やして務めていた商会を乗っ取り、食い続けて自分の商会を拡大――カララギでも有力な商会へと成長。その後、ルグニカへの進出の足掛かりに接触したユークリウス家との会談の中、王選候補者としての資質を見出され、王選に参加。夢は自分の国を手に入れること。果てなき強欲の持ち主。案外、人情家な上に義理堅かったりもする。獣人傭兵団との付き合いはカララギからであり、リカードとの付き合いは十年以上。副長の三姉弟とは大の仲良しで、特にミミは彼女にだいぶ甘やかされている。ユリウスとの主従関係は良好。彼女を立てるユリウスと、能力のあるものを取り立てるアナスタシアの相性は非常に良い。互いに見ているものが同じである限り、絆は強い。
加護なし、無能力者。金の臭いを嗅ぎつける嗅覚と、勝負所を見逃さない豪胆さは加護と無関係の天性の才能。ただし、それだけではない。

ユリウス・ユークリウス

ユークリウス伯爵家の長子、『最優の騎士』。
年齢21歳。身長179センチ。体重70キロ前後。丁寧に整えられた、濃い紫色の髪をした美青年。鼻筋の通った美形で、瞳の色は濃い翡翠色。ルグニカでも有数の資産家貴族であるユークリウス家の長子として、恥じない格好と振舞いを身につけている。気障な仕草と挙動が異常に似合う人物であり、近衛の中でも彼とラインハルトが並び立つと市井では大変な黄色い声が上がってしまう。
近衛騎士の中で団長を除き、もっとも騎士として優れた適性を持つことから『最優』の名を冠する騎士。その名に恥じない高潔さと信念の持ち主であり、騎士という二文字の概念に強い憧憬を抱いている理想家でもある。思慮深く、他者への気配りも欠かさない、内外共にかなりのイケメン指数を誇る嫌な奴。代々、騎士として王国に仕えてきたユークリウス家の長子であり、幼い頃より近衛騎士として王国の剣となるよう英才教育を施されてきた血筋からのエリート。剣技、魔法のどちらにも秀でた人物で、騎士団の中でも総合力ではトップなのではという呼び声も高い。良くも悪くも自己にも他者にも正当な評価を下す性格であり、甘さのない厳しい面がある。ただしそれは自分への厳しさが先立つものであり、根底には自分にも他者にも『もっとやれるはずだ』という少年のような期待を抱いているが故のものである。ラインハルトとは騎士団入団前からの友人であり、フェリスとは近衛騎士になってからの付き合いで、どちらとも良好な関係を築いている。スバルとは若干、難しい関係。
能力は『誘精の加護』。精霊を目視し、会話し、好まれやすいといった加護。六色の準精霊を従えて、全属性を扱うことができるユリウスの適性は非常に優れている。が、単純にこの加護があれば精霊に無条件で好かれるというわけでもなく、ユリウス当人の努力の成果があってこその精霊騎士としての立場といえる。ロズワールほどではないが、六色の魔法使いとしての能力はかなりのもの。剣技においても近衛の中で彼と切り結べるのは団長とラインハルトのみであり、実質的な近衛騎士の二番手、戦力においては三番手を任されている。
怠惰のペテルギウス討伐の際、流れの傭兵ユーリの偽名で傭兵団に同行し、スバルに協力した。

「こちらこそ、非礼を詫びよう。あのときの行いと発言の全てを撤回することはないが、それでも君を侮ったことだけは、心から」

イア、 クア、イク、アロ、イン、ネス

ユリウスが契約している各属性の準精霊。
インとネスは陰陽を司る準精霊。系統魔法の掛け合わせと二人のマナへの干渉を調律すると、本来は難しいとされる意思疎通の高等魔法『ネクト』ができる。

リカード・ウェルキン

獣人傭兵団【鉄の牙】の団長。
年齢39歳。身長206センチ。体重140キロ超過。褐色の短い体毛を生やし、狼に似た頭部を持つ生粋の獣人。種族的にはコボルトであるが、突然変異レベルで図体がでかい。全身にびっしりと黒い体毛が覆っており、その上から迷彩柄に近い配色の暗色系の服装で固めている。意外と瞳は円らだが、牙がすごい。
見た目通りの粗野で大雑把な性格の持ち主。声が大きく、カララギ弁で距離に関係なくくっちゃべることから初対面の受けは悪い。癖の強い傭兵団をまとめる立場だけに、自身もかなり癖の強い人物ながら人を見る目だけはあり、幼い頃のアナスタシアに将器を見てある事件で投資――結果、現在の関係を培っている。魔法的な才能はからっきしであり、大ナタを振るう戦い方は自己流であるが、本能任せの戦い方で十分に通じるワイルドな天才肌。戦況を見る目なども意外とあり、戦略眼戦術眼ともにそれなりに収めている。金銭にがめつく、金の切れ目が縁の切れ目でさばさばとした価値観の持ち主。それでもアナスタシアのことは付き合いの長さもあって可愛がっており、『お嬢』などと呼び立てながら彼女の目的のために協力している。
加護なし。純粋に本能任せの戦闘力と、長年の勘だけでここまでやってきた。アナスタシア同様に天性の持ち主であり、その部分も彼女と共通している。

ミミ・パールバトン

獣人傭兵団【鉄の牙】副長A。
年齢14歳。身長135センチ。体重30キロ台。 (*1)オレンジ色の体毛をした、愛らしい猫の獣人。ふさふさの毛を生やした猫がそのまま二足歩行していると思ってくれればいい。白いローブを羽織り、くりくり眼を好奇心で大きく動かして常に楽しそうに笑っている少女。ただし、傭兵団に所属している点から死生観に関しての割り切りはきっちりしており、幼い少女と侮るなかれ。戦闘力はリカードに次ぐ。
明るく能天気で裏表のない、見たまんま行動のまんま言動のまんまの少女。子どもらしい残酷さと遠慮のなさと図太さを併せ持っており、無邪気で無垢そのもの。傭兵団を家族として愛しており、リカードを父親、弟二人を全力で可愛がっている。ただし、彼女なりの可愛がり方なので弟二人はそれなりに大変。作中でぶっちぎりになんの裏表もない人物であり、白鯨戦でのスバルの活躍のおかげで好感度もそれなりに高い。実は、味方として見ると裏切る心配すら一切ない安全人物。「ミミに殺される可能性だけは今後、一切ない」と、作者も太鼓判を押して断言する。
能力は『三分の加護』。三つ子の姉弟であり、弟たちと痛みや感情を分かち合うという加護を持っている。ダメージを肩代わりするなどが可能であり、瀕死の一撃も分け合うことで命を拾うことなどが可能。ただし、長姉のミミだけ弟二人に比べてぶっちぎりでフィジカルが強い設定のため、肩代わりしても気付いていないときが多い。逆に彼女の運動量を分かち合い、弟二人の方が先にばてる始末。あまり役に立っていない加護のひとつである。

ヘータロー・パールバトン

獣人傭兵団【鉄の牙】副長B。
年齢14歳。身長135センチ。体重30キロ台。ミミと同様、オレンジ色の体毛を持つ獣人。姉との違いはヒゲの長さと、若干たれ目気味なところ。青いローブを羽織っていて、くりくり眼でおどおどと周囲を神経質に見回している気疲れしやすい少年。姉の後ろに隠れていることが多い。
極度のシスコンであり、姉にべったり。傍若無人なミミの振舞いを基本的になんでも許して肯定してフォローしてしまうため、ミミはすくすくあの人格に育った。ミミのフォローをして生きてきたため、気配りや空気の変化に敏感な性格で、団員たちからの信頼も厚いために副長としてはもっとも副長らしい。リカードが戦いが始まると最前線に飛び込んでいってしまうため、実質的な指揮官であるともいえる。姉にべったりではあるが、弟との仲も良好。ティビーもヘータローは素直に尊敬しており、兄の言い分はちゃんと聞く耳を持ってくれる。
『三分の加護』は姉と同様。ただし、基本的に姉の運動量と疲労を肩代わりするパターンが多く、最前線で好き放題に暴れる姉の尻ぬぐいを加護にすらも運命づけられているといってもいい。当人はそれで幸せそうなので、さもありなん。

ティビー・パールバトン

獣人傭兵団【鉄の牙】副長C、会計係。
年齢14歳。身長135センチ。体重。30キロ台。姉と兄同様に、オレンジ色の体毛の猫獣人。ただし、左目にモノクルをつけた参謀的見た目の小猫。黒いローブを羽織っており、モノクルの向こうにくりくり眼が理知的に輝く、計算高いタイプの少年。姉と兄の突っ込み役。
元気いっぱいの姉と、その姉のフォローをしつつ幸せそうな兄の下で、そんな二人を傍観者的に冷めた目で見て育ったクールな末っ子。姉と兄に関しては放任を貫いており、自分に被害がこなければこれといって手出し口出ししない。もっとも、端っこで本でも読んでいようものなら「ティビー、苔がはえるぞー!」と姉がちょっかいをかけてくるため、被害はけっきょくわりと常に受けている。傭兵団の事務的な部分を任されており、大雑把な傭兵団は彼なしではまともに機能しないともいわれている。知識欲を貪欲に持ち合わせており、アナスタシアの商会の手伝いなどもしており、アナスタシアなどは「ミミが賑やかし、ヘータローがオヤツ係。ティビーが秘書で傭兵団から引っこ抜いたりでけんかなー」と思っていたりする。それとなく彼女から誘いは受けているものの、なんだかんだで姉と兄から離れるつもりはない。
『三分の加護』の最後のひとりであり、ヘータロー同様に貧乏くじ。この加護のおかげで、姉弟での同時咆哮で巻き起こす破壊の『干渉波』を放つことが可能。昔、山登りをした際にミミとヘータローが騒いでいた際に発生した偶発的な必殺技であり、姉は五回、ティビーとヘータローはそれぞれ二回ずつ程度が限度の必殺。一日にミミを入れて、弟二人で交代して組んで四回しか使えない技である。

プリシラ・バーリエル

傲岸不遜なる王候補。
年齢19歳。身長164センチ。橙色の背に届く程度の髪をバレッタで一つに束ねた、血のように赤い瞳をした少女。気の強さがつり目がちな部分に表れており、挑発的な肢体をしている。作中登場人物の中で一番胸が大きい。毒花のような魅力を放つ少女。
『世界は自分に都合のいいようにできている』と公言してはばからず、事実あらゆる出来事は彼女にとって幸いをもたらすようになっている。自分本位で奔放な性格はそれらを原因とするもので、鼻っ柱を一度も折られたことがない故の傲慢さである。出身はヴォラキア帝国であり、帝国の地方領主の娘として生まれたが、ルグニカ王国との小競り合いの中で生家が失墜。齢十二にしてすでに男を虜にする美貌の片鱗を覗かせており、王国側に人身御供として売り渡される。が、彼女を手に入れるものは次々と謎の没落、変死を遂げており、その境遇にも関わらずいまだ清い体を保っている。最後に彼女を手に入れたのはライプ・バーリエルという王国の重鎮だったが、野心家の彼もまたプリシラに王候補としての資質があると公表した時点で事故死。現在、そのまま家督はそっくり彼女のものになっている。そのため、付いた異名が『血染めの花嫁』である。
能力は『太陽の加護』。陰陽の陽属性の加護をひときわ強く受けており、日中のあらゆる行動に補正がかかる。また、才能だけで陽魔法を使いこなす才媛であり、加護の影響もあって身体能力もずば抜けて高く、王候補の中ではクルシュに匹敵する戦闘力の持ち主。ただし、これには彼女の状況を取り巻く豪運や悲劇的な運命はなんら関係がない。

アルデバラン / アル

記憶喪失の異世界人。
年齢推定40前後。身長173センチ。体重70キロ前後。左腕を失った隻腕であり、顔に負った負傷をヴォラキア製の黒い鉄兜で覆っている怪しすぎる風体。首から下は普通の町人風の格好に草履と、そのスタイルは意味が不明。腰の後ろに青龍刀に似た身幅の広い剣を差しており、片手でそれを扱う戦闘スタイル。
軽薄な言動におちゃらけた態度、記憶喪失の上に異世界ですでに十数年も過ごしているという点から、スバルとすぐに打ち解けたある意味同類。ヴォラキア帝国で剣奴として扱われていた時間が十年近くあり、片腕の損失と戦い方はそこで学んだもの。王候補であるプリシラに仕える騎士の立場だが、彼にもプリシラにもそういった認識は薄く、アルはプリシラに対してはお目付け役、プリシラはアルを雑用兼道化のように扱っている節がある。その関係性について、アルにはこれと言って思うところはない状況。生き残る才能だけが傑出しており、剣の扱いも魔法使いとしても二流止まり。裏を掻き、意表を突く戦術を得意とし、それしかできないと嘯く人物でもある。この作品における三つの確信的な謎の一つを握る人物。
加護なし、無能力者。ひたすらに神がかり的な生き残りの才能だけで、剣奴としても凡庸な実力でありながら生き延びてきた。まるで少し先のことが見えているかのような彼の戦いぶりは、闘技場ではそれなりに盛況だった模様。

マーコス

近衛騎士団の団長。
年齢は三十前後で、精悍というよりは厳つい顔立ちの巨漢。理知的な青の瞳が眩く輝くとき、危険な魔力反応、および武装を確認することができる模様。

ハインケル・アストレア

近衛騎士団の副団長。ヴィルヘルムと剣聖テレシアの息子。赤毛。
剣聖の血筋に生まれながらも剣聖になれなかった。
ラインハルトの父親。
ほぼ名目だけの名誉職として近衛騎士団に在籍。

マイクロトフ

賢人会の代表。
刃の切れ味を思わせる眼光を持つ白髪の老人。腰は曲がっていない様子だが身長は低く、真っ白に色の抜け落ちた白髪が長く伸ばされ、その髪と長さを競うようにヒゲもまた長く長く整えられている。

ボルドー

賢人会の一人。

リッケルト

40代くらいの中年の文官。

オットー・スーウェン

不運で間の悪い突っ込み商人。
年齢20歳。身長177センチ。体重60キロ台。灰色の髪をギャルゲー主人公ぐらいの長さに伸ばした髪型。真面目な表情をしていればそれなりに甘いマスクをしているが、大抵の場合は突っ込みを入れているか大声を出しているか慌てふためいているか凹んでいるかなので、あまり活かせる場面がない。中肉中背の体格だが、行商人としてそれなりに鍛えているのでスバルより強かったりする。
産後すぐに産湯で溺れかけたことを皮きりに、なにをしても結果がイマイチついてこない星の下に生まれついた不運な青年。加護のせいで、幼い頃は見えないものと会話する頭の残念な子だと思われて冷遇されたりもしたが、実家を兄が継いだのを契機に行商人として独り立ち。以降、死なないにしても実りがないという低空飛行を四年ほど続けて、スバルと遭遇して巻き込まれていくことになる。
能力は『言霊の加護』。おおよそ発声器官を持つ生き物とならなんでも言葉を交わせる。ただし、会話中は完全に相手の言語で喋るため、傍から見るとかなり怪しい絵面。蝙蝠と会話するときは超音波。虫と話すなら高音で鳴き、魚と話すときはえら呼吸。地竜や動物だけでなく、虫や魚からすら言葉を聞けるというわりとチートな加護なのだが、あまり使いこなせていないため普段はセルフ耳栓状態。因みに、地球でしか使われない固有名詞の類も、ニュアンスは伝わる。


「――ごちゃごちゃを全部話す! そして、最後に『信じろ!』って言やぁいいんですよ! 友達なんだから!!」

フルフー

オットーが所有する荷台が大きい幌付きの竜車を引く、パワフルな巨体をした長距離用地竜。重量級寄りなその姿に速度の面を心配されるが、その分、持続力が違う。長距離用の中でも特に体力に優れる種族のため、三日走り通しでも潰れることはない。

パトラッシュ

漆黒の体皮を持つスバルの地竜。性別はメス。
白鯨戦前に好きな地竜を選ぶよう言われた時にピンときて選び、白鯨討伐の報酬としてクルシュから引き取った。名前は、忠義に厚い相棒、と考えたスバルが白鯨戦の最中にとっさに名付けた物。足が速くて、体力もあって、なにより賢い。地竜の中でも気難しいとされるダイアナ種だが、スバルには身命を賭して懸命に尽くしてくれるほど懐いている。常に命の危機に晒されているスバルと共に幾つもの死線を乗り越え、どんなに負傷しても息絶えるその時までスバルを守り通す忠竜。
なおナンパの件は「あれはユリウスの軽口です。パトラッシュは貞淑な淑女なので、余所の地竜に軽々しくついていったりしませんぜ。」とのこと。

ケティ

行商人。魔女教徒。
スバルにオットーを紹介した、長身で痩せぎすの男。幌つきの荷車に、主同様に細身の地竜を二匹連れた人物。魔女教の内通者として捕まり、スバルを害そうとしたところをヴィルヘルムに切り殺された。

ペテルギウス・ロマネコンティ / 『怠惰』

魔女教大罪司教『怠惰』担当。
年齢402歳。身長180センチ。体重50キロ台 (*2)深緑の髪をおかっぱみたいな長さで切り揃えて、虫のように無感情な目をした痩せぎすの人物。首を傾け、腰を曲げ、奇態な体勢で話すことを好み、また自らの肉体を自傷することを好んで行う、見間違える心配もないぐらい完全に変質者。
四百年前、魔女サテラが活動していた時代から生き長らえてきた邪精霊であり、宿主の肉体を乗り換えることで生を繋いできた。彼の生きる理念は『勤勉さ』と『愛』の二つだけであり、それを証明することだけが彼の生き甲斐であり、生きる理由。最初期の大罪司教であり、サテラへの偏執的な愛情も大罪司教の中でもっとも強い。福音書の記述に従い、他の魔女教徒の誰よりも先駆けて活動することから、魔女教の中でも突出してその存在の知名度と被害の大きさを高めていた厄介者。肉体のない邪精霊であることから、乗り移った肉体が感じるあらゆる五感に快感を得る。特に痛みに関しては生の実感を強く味わえることから、過剰な自傷行為に走る傾向があった。クズばかりの大罪司教の中で最初の敵であり、その脅威の一端を知らしめられたと思える好人物。その行いの数々の根幹、彼と魔女との関わりは実は物語の深いところに絡みついており、『ペ』テルギウスである理由や、四百年前にいったいなにがあったのかなど作品全体を見てもけっこうな重要人物。
能力は『怠惰』の魔女因子。大罪司教がそれぞれに宿す因子の一つ、『怠惰』を取り込んでいる。精霊術の素養のないものの肉体を蝕む『怠惰』に、届かないところへ手を届かせる『見えざる手』と、初見殺し特化の嫌がらせタイプ。ここに精霊である本人の乗り移り特性が加わると、本編のしつこい敵役が出来上がってくる。
名前の愛称形はジュース。

ライ・バテンカイトス / 『暴食』

魔女教大罪司教『暴食』担当。
濃い茶色の髪を膝下まで伸ばした、背丈の低い少年。身長は154センチほどで、年齢は14、5歳ぐらい。細い体をボロキレのような薄汚れた布でくるんだだけの服装をしている。
『暴食』の権能は、相手の『名前』を食べて周囲の記憶から奪い、相手の『記憶』を食べて当人の記憶を奪う。両方を奪われれば、それはもう何者でもないヌケガラだけが残り、ヌケガラはなにもできないし、なにもされない状態になる。もちろん、排泄も不要。

「愛! 義侠心! 憎悪! 執念! 達成感! 長々と延々と溜め込んで溜め込んでぐっつぐつに煮込んで煮えたぎったそれが喉を通る満足感ッ! これに勝る美食がこの世に存在するかァ!? ないね、ないな、ないよ、ないさ、ないとも、ないだろうさ、ないだろうとも、ないだろうからこそ! 暴飲! 暴食! こんなにも! 僕たちの心は、俺たちの胃袋は、喜びと満腹感に震えてるんだからッ――――――じゃァ、イタダキマス」

レグルス・コルニアス / 『強欲』

魔女教大罪司教『強欲』担当。
細身の体つきに、長くも短くもなければ奇天烈に整えられたわけでもない白髪。黒を基調とした服装は特別華美でも貧相でもなく、面貌も目を引く特徴はない。いたって平凡で、どこにでもいそうでどこにでも溶け込めそうで、街中で見かければほんの十数秒で記憶から消えてしまいそうな、そんな凡庸な見た目の男。
饒舌に自分の意見を他者に押し付ける身勝手な人物。呼び名に反して自らを無欲と称すが、権利を侵害されると激昂する。百年前の時点で、七十八人の妻がいた。
軽く持ち上げた手を振るだけで、他者の両腕が肩から千切れて弾け飛ぶ。土を掘り返してぶちまけるだけで、投じた泥や石の破片は散弾となり、人体など一瞬で血煙に変える。何か、他者からの影響を受けないカラクリがあり、強大な暴力を受けても傷を負うどころか、衣服に汚れ一つ付かないなど、攻防において隔絶した力を持つ。魔女教の中でも被害の大きさによって特に有名。ヴォラキア帝国の精強な兵たちが守り、その堅固さから城塞都市と呼ばれたガークラという都市を、ひとりで攻め落とした。

「僕の意見を無視するってことだ。僕の権利を侵害するってことだ。僕の僕に許されたちっぽけな僕という自我を、私財を、僕から奪おうってことだ。――それは、いかに無欲な僕でも許せないなぁ。」

フリューゲル

賢者。400年前に大樹を植えた。
神龍ボルカニカと盟約を結んだ。

シャウラ

賢者。
初代剣聖や神龍ボルカニカと共に魔女の封印に尽力した英雄。四百年前から大瀑布近くのプレアデス監視塔で隠遁している。しかし、隠遁とは名ばかりで、魔女復活を目論む輩がいないか目を光らせていると思われる。

ボルカニカ

神龍。ルグニカ王国と盟約を結んだ。エキドナが死ぬ前に魂を墓所に封じた。タコ殴りにされたことでセクメトに苦手意識がある。

レイド・アストレア

初代剣聖。
単独で成体含む十二もの龍を切って落とした功績を持つ。

テレシア・ヴァン・アストレア

先代剣聖。赤毛。ヴィルヘルムの妻。故人(?)。
剣聖の血筋に由来する大量の加護を持ち、その1つが死神の加護。
ラインハルトの祖母。

フォルド

先代国王の弟。フェルトの父親と目される。故人。

ライプ・バーリエル

プリシラの元夫。故人。

ヘネヘヘ

王都上層区から脱出の手引きする手筈だった人。

八つ腕のクルガン

ヴォラキアの英雄。ヴィルヘルムと幾度か剣を交えた関係で、八つある腕の六本まで切り落とされ、代わりに腹を串刺しにした。互いに瀕死で痛み分けとして、決着はつかず終いになった。

  • 最終更新:2014-07-27 22:29:39

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